【青い街灯の下で】
第二章 城嶋 4
あの夜からしばらく経った。
リサの態度は表面的には変わっていない。
だが、城嶋の中では何かが大きく変わった気がしている。
「城嶋さん、ちょっと」
「何?」
リサは近くにくると思いのほか背が高い。
165センチはあるだろうか。
城嶋はギリギリ170といったところなので、リサの目がすぐ傍にあることで今更ながら動悸が上がるのだった。
「ええっと、渡したいものがあるんですけど・・・あれ?どこにいっちゃったんだろ??」
リサが懸命にバッグの中を探っている間、城嶋はぼーっとリサのポニーテールに見え隠れする項(うなじ)を見つめていた。
「城嶋さん、ごめんなさい!渡したいものがあったんですけど、忘れちゃったみたいです。」
「ああ、いいよ、また今度で」
あの項に唇をよせられたら・・・城嶋は半ば上の空で答えた。
「でも、早く渡したかったんです。
今日は土曜日だから、次にお会いできるのはもう来週になっちゃうじゃないですか。」
「そうか。別にオレは来週でもいいけど。そんなに急ぎなの?」
「ん〜急ぎっていうわけではないですけど、できれば早めがいいというか・・・
そうだ!明日は時間ありますか?」
何をそんなに早く自分に渡したいのだろうか。
そこまで粘られると気になってくる。
「明日は特に予定ないけど」
「本当ですか!?じゃあ、明日BLUEで会いましょうよ!」
リサからの誘い。
今まで気になっていたことがわかるかもしれない。
断る理由なんてどこにもない。
「いいよ。で「も、オレBLUE?って店知らないぞ」
「ええー!城嶋さん、BLUE知らないんですか?
国道沿いのセルフのガソリンスタンドの隣にあるんです。
注意していればすぐにわかりますよ、大学からそんなに遠くないから」
「へぇ〜。で、何の店なの?」
「喫茶店です。
わたし、そこのお店大好きなんですよ。
マスターがすごくいい人なんです。」
「カフェじゃなくて喫茶店なの?
今時珍しいね」
「そうですよね〜。
わたし、コーヒー好きなんで、結構行くんです。
BLUEは豆にも轢き方にもこだわってて、すごく美味しいコーヒーを入れてくれるんです。
一回飲むと癖になりますよ!
それとも、他のお店がいいですか?
でも、行ったことないんだったら、ますますわたしとしてはおススメしたいんですけど・・・」
リサはどうやらその《BLUE》が大変なお気に入りらしい。
まあ、国道沿いならいつも車で走っているからわかるだろう。
「そこでいいよ。時間はどうする?」
「えーっと、城嶋さんは何時がいいですか?」
「何時でもいいよ。」
「じゃあ、わたしの勝手な都合で悪いんですけど、一時でいいですか?」
一時か・・・
「いいよ」
「では、明日の一時にBLUEで!忘れないでくださいね」